(質問)
弊社は、所有する建物の1階フロアを飲食店テナントAに賃貸していますが、最近の災害によって、建物そのものの損傷はなかったものの、地域の電気、ガス、水道などライフラインが停止し、それぞれ2週間もの日数が経過してやっと復旧しました。テナントAからは、その月の賃料(30万円)の半額程度の減額を要求されていますが、応じるべきでしょうか。
(回答)
民法第611条第1項によれば、賃貸物件が一部滅失その他の事由で使用収益ができなくなった場合は、賃借人の帰責事由によらないときは、使用収益できなくなった部分の割合に応じて賃料が当然に減額されるものとされています。貴社の相談事例のように、賃貸建物自体に「一部滅失」という損傷がない場合でも、「その他の事由により使用収益ができなくなった場合」には賃料減額となります。
テナントAのケースは、電気、ガス、水道などのライフラインの停止という賃借建物の一部滅失以外の「その他の事由により使用収益ができなくなった場合」と考えられます。この場合は、前記の民法の規定により、使用収益が妨げられている期間つまりはライフラインが停止している期間の賃料の減額が認められ、賃貸人である貴社は、賃料の減額を認めざるを得ないでしょう。
問題は、どれだけの減額になるかです。前記の民法の定めでは、賃料の減額の程度は、「使用収益ができなくなった部分の割合に応じて」とされていますが、法令や判例上特に基準があるわけでもありません。賃貸借契約書に定めがあればそれによりますが、多くは定めがないでしょう。一つ参考となる(公財)日本賃貸住宅管理協会の「設備等の不具合による賃料減額のガイドライン」によれば、電気や水道の停止の場合はいずれも賃料月額の3割減で修繕完了日(但し2日間は控除)までの日割り計算、またガスの停止の場合は賃料月額の1割減で修繕完了日(但し3日間は控除)までの日割り計算をして、減額分を算定します。貴社の事例では、復旧に2週間要したとのことで、ひと月30日として、電気や水道では、各々、30(万円)×0.3×(14-2)/30=3.6(万円)、ガスでは、30(万円)×0.1×(14-3)/30=1.1(万円)、三者合計8万円程度の減額が目安となるでしょう。
これによれば、テナントAの主張する賃料の半額の減額要求は過大でしょう。