弁護士に聞こう!【賃料保証会社により未払賃料の支払いがなされた場合、賃貸人は賃料不払で契約解除できますか。】

(​質問)
 弊社は、テナントA社のために、賃料保証会社と保証契約を締結しており、A社の賃料不払いが既に4か月続く中、その都度賃料保証会社から不払い分の支払いを受けています。しかし、最早A社は信頼できないので、契約を解除したいと思います。賃料保証会社からの支払いにより賃料は全て回収できている現状で、契約解除は可能でしょうか。

(回答)
 まず、大阪高裁平成25年11月22日判決は、賃料保証会社がテナントによる賃料5ヶ月分の不払い分を不払いの都度賃貸人に支払っていたが、賃貸人は、テナントが賃貸人に対して賃料支払いをしなかったことを理由として、テナントに対し滞納した賃料の支払いを催告し契約解除したケースにおいて、解除を有効とする判決を出しました。

 テナント側は、不払い賃料については保証履行されているから賃料不払いはなく、解除は無効である旨反論していました。しかし、判決は、保証会社による支払は、あくまでも保証会社とテナントとの保証委託契約に基づく保証の履行であって、これによりテナントの賃貸人に対する賃料不払いという事実に消長を来すものではなく、契約解除の原因事実である賃料不払いの発生は左右されず、テナントの賃料不払いによる賃貸人との信頼関係は破壊されている、と判断しています。

 この判決の上告審である最高裁は、平成26年6月26日、上告を受理しないとの判決を下しました。これにより、事実上、大阪高裁の判決は支持されたこととな ります。

 その後の福岡高裁平成28年2月29日判決も、同様に、保証会社がテナントの未払い賃料を支払っていても、これは保証契約に基づく保証の履行であって、テナントの賃料不払いという事実が消滅するものではないとして、契約の解除を肯定しています。ただ、賃貸人側は、テナントに対する支払いの催告において、賃貸人には未払い賃料の保証履行がされているので、更に賃貸人への支払を催告するのは論理的説明がし難いと思ったのか、テナントに対して、保証履行した賃料保証会社への立替え分を支払うよう催告し、これに応じなかったテナントに対して解除しており、催告の仕方として参考になります。

 判例の傾向からして、貴社のケースでも解除は認められるものと思われます。

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