【Q&A】借主が賃貸借か使用貸借かは買受人にとって経営上重大な問題

Q.弊社の知人が経営するX社は、本業の他に遊休不動産の賃貸もしています。

知人の先代のときにYに遊休建物を使用させていましたが、賃料を支払うとの書面は交わしていなかったものの、Yは、使用している建物の他にX社が所有する他の不動産についても、固定資産税を負担して来ました

ところが、知人の代になってX社の経営が思わしくなくなり、その建物が競売開始決定を受けましたので、弊社としては競売手続きを通じてこれを買い受け新たな賃貸経営をしつつ、将来は知人に買い戻してもらうことまで考えています。
しかし、買取ってもYから建物の賃借権の対抗を受けないでしょうか

A.貴社としては、Yに対して明渡を請求できるものと思われます。

X社とYとの建物の貸借関係は賃貸借か使用貸借かという問題です。
両者の相違は、借主が物件の使用収益について賃料という対価を支払うかどうかにかかります。

貴社のケースでは、Yは全く無償で建物を借用しているのではなく、借りていない他のX社の不動産まで含めて固定資産税を支払っており、こうした場合には賃貸借となるのではないか、という問題となります。

Yとしては、賃貸借であれば、競売による買受人である貴社に対して建物の占有をもって賃借権を対抗でき、貴社の明渡請求に応じることはありません。

しかし、使用貸借であれば、第三者に対する対抗という制度がないので、貴社からの明渡請求には応じなければなりません。
そこで、Yにとっては賃貸借か使用貸借かはまさに死活問題となります

固定資産税を支払っていても、使用貸借と判断されることも

ご相談事例と同様のケースで、最高裁昭和41年10月27日第一小法廷判決は、建物の借主がその建物等につき賦課された公租公課を負担しても、それが使用収益に対する対価の意味をもつものと認めるに足りる特段の事情のない限り、こうした負担をしていても使用貸借と認める妨げとなるものではない、とし、借主が負担した固定資産税年額2~3万円に対して、使用建物の適正賃料が年額約12万円という事実関係につき、使用収益に対する対価の意味をもつと認めるに足りる特段の事情はないとして、使用貸借と判断しています。

このように、借主の負担が適正賃料に匹敵するかどうかがポイントとなります。適正賃料額に及ばなければ、賃貸借ではなく負担付使用貸借と判断されます。

ご相談の事例でも、Yが負担する固定資産税は使用建物の適正賃料に遠く及ばないのが通常と思われますが、そうである限りYの使用は(負担付)使用貸借と判断されます。
競売手続きにおいて裁判所が作成する物件明細書にも使用貸借であると記載されるはずです。貴社としては、Yに対して明渡を請求できるものと思われます。

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