知っておきたい税務の知識【「相続土地国庫帰属制度」について】

土地を親から相続しても、遠くに住んでいて、その土地を利用する予定がないケースがあります。これらの土地が管理されないまま放置されると、将来、「所有者不明の土地」となってしまう恐れがあります。そのような事態を防止するため、土地を相続した人が一定の要件を満たした場合には、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されました。

◎制度の開始時期
 「相続土地国庫帰属制度」は、令和5年4月27日からスタートします。
◎制度の対象者
 土地を相続した相続人。(共有の場合には、共有者全員での共同申請が必
要です。)
◎土地の要件
 国が管理をするのが困難な土地は対象になりません。
(境界が明確で、権利関係もクリアで、管理に手間がかからないような更地、が対象となります。)
 具体的には、下記のような土地は対象外となります。

<対象外の土地>
・建物、樹木などが存在している土地
・抵当権などが設定されている土地
・土壌汚染や埋蔵物などがある土地
・隣地との境界に争いがある土地
・がけ地など、管理に労力がかかる土地
 なお、法律施行後に相続した土地だけでなく、相続で取得した土地であれば、法律施行前の、数十年前に相続した土地でも対象となります。

◎費用
 審査手数料がかかります。(金額の詳細はまだ公表されていません。)
 また、承認後には負担金として10年分の土地管理費を支払う必要があります。(土地の面積や、地目等により金額が変わります。)
(例)市街地の100m²の宅地:約55万円
市街地の200m²の宅地:約80万円
市街地の300m²の宅地:約100万円
原野:20万円

◎メリットとデメリット
 本制度のメリットは、相続した不要な土地を国に引き取ってもらえることです。
 これまでは、相続した土地に不要なものがあった場合、「相続放棄」により手放すことはできましたが、相続放棄をするとなるとその土地だけでなく全ての財産を放棄しなければならず、いらない土地だけを引き取ってもらう、ということはできませんでした。
 そうなると、いったん相続をした上で自分で引き取り手を探す必要がありますが、遠方の土地ですとなかなか対応をしてくださる不動産屋さんも無く、自力で処分をするのに苦労する、という問題が発生していました。
 本制度を利用すれば、要件を満たしていれば不要な土地だけを国に引き取ってもらうことができるため、大きなメリットと言えます。
 一方で、デメリットとしては手続きをするための手間とお金がかかることです。

(審査手数料、負担金の他、もし建物が残っている場合にはその取壊し費用や、隣地との境界確定の費用なども必要となる可能性があります。)
 一般的には、価値のある土地であれば、わざわざお金を払ってまで国に引き取ってもらう必要はなく、売ればお金が手に入るのでその方が当然良いわけです。そのため、本制度を利用するのは、普通には売れないような土地、が対象となると想定されます。
 普通には売れないので仕方ないとは言え、わざわざお金を払ってまで自分の財産を引き取ってもらう、という制度なので、そのコスト等は考慮した上で制度の使用を検討する必要があります。

◎まとめ
 本制度の成立により、維持管理に負担がかかる、不要な土地を相続した場合の処分方法の選択肢が広がったと言えます。
 来年の施行に向け、より詳細な情報が公表されていく可能性があるため、相続した土地を手放したい場合には、今後の情報にも注目しつつ、本制度の適用を検討してみましょう。

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