中途解約の場合の残存期間の賃料の支払

中途解約の場合の残存期間の賃料の支払

(質問)

弊社は、都心に新築したビルのワンフロアを、A社にオフィス用途にて期間5年として賃貸し、特約に、賃借人A社が期間満了の前に中途解約するときは、違約金として期間満了までの残存期間の賃料を一括して支払う旨を定めていました。ところが、契約から1年後に、A社は、コロナ禍でのテレワークで賃借フロアが過大になったとして中途解約を申入れてきました。
弊社は、特約通りに残存期間の賃料の一括払いを請求できますか。

(回答)

前回は、中途解約の場合特約通りに残存期間の賃料の一括払いを請求できるかについて、東京地裁平成8年8月22日判決を挙げ、こうした場合の違約金の相場は、残存期間の賃料全額ではなく1年分程度であろうとする見方もあることを紹介しました。
しかし、賃借人がある程度規模のある会社で諸々の取引にも精通し、あるいは対象物件の賃借のニーズから、違約金条項など十分理解した上で契約したような場合、残存期間の賃料全額を違約金とする特約を有効と認める判例もあるので、貴社のケースでも参考にすべきです。

そうした判例のひとつ東京地裁平成20年1月31日判決は、賃借人がコンビニ営業する会社で、期間は10年間、中途解約の場合は残存期間の賃料を一括して支払うとの特約のもと、賃借人が契約から3年未満で中途解約したケースです。
判決は、本特約は、賃借人が、対象建物でのコンビニ営業の機会を競争他社との競争で勝ち取りたいがために、あえて自己に不利で賃貸人に有利な条件提示をした結果、賃借人が期間10年分の賃料収入を賃貸人に確保させるべく特約を結んだと認定しました。
そこで、特約は中途解約の場合の残存期間の賃料全額相当の賃貸人の損害を填補するものとして有効であり、残存期間の賃料請求はできる旨判示しています。 

 もう一つ、東京地裁平成22年6月24日判決は、賃貸人は大手不動産会社の組成したファンド会社、賃借人はブリヂストンの子会社で、期間3年、賃借人は中途解約ができないが、期間満了までの残存期間の賃料を一括して支払う場合は中途解約できるとの特約のもと、タイヤ保管用の倉庫を借りたが、3か月後に中途解約の申入れをしたケースでした。
判決は、賃借人は、残存期間の賃料支払義務を免れないことを認識して契約締結していると認定し、更に、賃貸人が新たな賃借人と賃貸借契約を締結して旧賃借人からの賃料の他に賃料をダブルでとる場合もあることを当然に予想していたとまで認定して、賃貸人が解約後に第三者に賃貸して賃料を取っていても、賃借人に対する残存期間の賃料請求は許される、と判示しました。

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