相続登記の未了について

「長期相続登記等未了土地解消作業」をご存じでしょうか?平成30年11月、法務省と国土交通省が所管する「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行され、不動産登記法にも特例が設けられています。

所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について、法務局の登記官が亡くなった方の法定相続人等を自ら探索した上で、職権で長期間相続登記未了である旨等を登記に付記して、さらに法定相続人等に登記手続を直接促す、という制度です。相続人が何もしなくても法務局から相続人のうちの任意の一人に「必要な登記手続を促す通知文書」が送付される場合がある、ということになります。

長期間相続登記が未了となっている恐れのある土地は日本全国に相当数あり、政府の試算では、最後の登記から50年経過している不動産は大都市で6.6%、中小都市・中山間地域では26.6%になるとも言われています。各法務局はこの制度の対象となる不動産の数を毎年増やしていますので、法務局から突然通知を受け取って驚く方や、「長期相続登記等未了土地」と付記された珍しい登記を目にする方が今後増えていくはずです。所有者に相続が発生した土地や建物の登記上の名義を変更せずに長年放置してしまっている方は少なくありません。相続登記が終わっていなくても固定資産税については特に問題なく支払うことができることもあり、ご自宅であっても相続登記手続が完了していないことに気が付いていない方もいます。お父様の相続についてご相談をいただいたところ、おじい様の相続登記がそもそも完了していなかった、などということは司法書士にとってはよくあるお話です。

相続登記をしない最大のデメリットは、放置している間に新たな相続が発生し、法定相続人が増えて権利関係が複雑になり、法定相続人の探索に時間がかかったり、相続登記を行うための諸々の費用が高額となったりする恐れがあることです。相続が何代にもわたっている場合には、相続人を調査するだけでも相当な労力がかかりますし、例えばひいおじい様の物件のために会ったこともない10人以上のはとこ同士で遺産分割協議、となると非常に重たい問題となってしまいかねません。

相続登記に必要な登録免許税については、免税措置が適用される場合があります。例えばおじい様の土地の相続登記にあたり、既に亡くなられているお父様のお名前でいったん登記する場合、この登記について登録免許税が免税されることとなります。数世代にわたる相続登記であっても二重、三重に課税されないとするこの免税措置(結果的に数十万円免税される方もいます)は、今のところ来年3月31日までが適用期間とされています。この免税措置が適用されるうちに、また相続登記の義務化が施行される前に、気になられている方はなるべく早く司法書士に相談することをお勧めします。

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