相続登記の義務化

今年4月、国会で「民法等の一部を改正する法律」が成立し、令和6年をめどに土地や建物の相続を知った日から3年以内に相続登記を申請することが国民に義務付けられることとなりました。正当な理由なく相続登記の申請を怠ると10万円以下の過料(行政上の義務の違反者に対し金銭の支払を求める制裁)が科されます。氏名や住所の変更についても同様に2年以内の登記申請が義務付けられ、申請を怠ると5万円以下の過料が科されます。大きく報道されたので多くの方が目にしたニュースではないでしょうか。

不動産登記の申請が義務化されるというのは一昔前であればとても考えられなかったことですが、背景はよく知られている所有者不明土地問題です。所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地の割合は日本の国土の2割以上とも言われており(九州の面積を大きく上回っています)、公共事業や民間の再開発事業等の大きな足枷となっています。日本の高齢化率は上昇を続けており今後死亡者が増えれば更に深刻な問題となるのは明白でした。

不動産の相続登記は事務的に手間のかかることもある手続ですが、相続発生から1年以内に司法書士に依頼すれば8~9割の案件は概ね2~3ヶ月程度で完了します。相続人の一部が認知症を患っていたり、又は行方不明であったりするとやや難しくなりますが、これらも司法書士に依頼をすれば3年以内の登記完了は充分可能です。困難なのは遺産分割協議が成立する見込が立たない場合です。家庭裁判所での調停等を経て何とか完了できるケースであればともかく、長期間が経過して関係者が次々と亡くなり収拾がつかないほど相続人の人数が増えてしまったケースなどでは手続の完了は事実上不可能と言わざるを得ないこともあるのです。

今回の法改正では新たに「相続人申告登記」が創設されました。登記名義人の法定相続人であることを相続人の一人が申出する登記を申請することで、登記申請義務を簡易に履行して過料の制裁を免れることができます。ただし、この登記をしただけでは例えば不動産の売却をすることはできません。4~5年後にはこの登記だけを申請して売却しようとした相続人が仲介会社や司法書士からストップをかけられるケースが発生しているかもしれません。

義務に違反して裁判所から過料の支払いを命じる決定通知を受け取ることになる方は少なくなさそうです。固定資産税を毎年納付していても相続登記や住所変更登記が完了しているとは限りませんし、自宅を購入した時から引越前の住所が登記されたままになっていることに気付かない方も珍しくないからです。法改正が施行されるまでにはまだ猶予があるので、不安があればなるべく早く司法書士に相談することをお勧めします。

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