先手必勝!!どうなる?2020年以降の不動産市況 勝ち残るための一手!!

2030年までにAI化が不動産業界にも浸透 人間にしかできないサービスを提供する企業が生き残る

2020年以降、競争激化が予想される不動産業界。将来の展望を見据え、今からどのような戦略を立て、立ち向かうべきか。さくら事務所の長嶋修会長に話を伺いました。

―昨今の不動産市況について長嶋さんにお聞きしたいのですが、どのように分析されていますか?

第一に、金融機関の融資体制が変わりました。『かぼちゃの馬車』事件に端を発したスルガショックに始まり、不正融資発覚による西武信用金庫の立ち入り検査などがありました。これを受け、個人の不動産投資には融資を出さないという金融機関が大半です。もちろん影響を受けていないところもあります。

しかし、融資の引き締めがあったことで、高価格帯の1棟物のマンションといった建物は、価格が下がったことで利回りは上がりました。健美家の情報によると平均利回りは9%と天井は過ぎ、頭打ちの状況ですね。

国土交通省が発表する『公示地価』によると、日本一高いとされる中央区銀座4丁目は、今年もプラスではあったものの、0.1%増と微増でした。このままですと、プラスマイナス0かマイナスになる可能性があります。

地方は、あと1~2年は都市部からの波及的な影響があるので上昇地点が増えたとか、下げ止まったという雰囲気はありますが、最先端のところでは鈍化している以上、上昇は見られないか、ややマイナスになる可能性があるというタイミングです。

―なるほど、今まさに過渡期にあるというわけですね。

そうですね。何よりも、今一番気がかりなのは株価です。今日の日経平均株価は2万円を切りませんでしたが下落傾向にあり、為替相場も年明けに104円を記録したこともありますので、100円を切る展開も十分にあります。(2019年8月上旬時点)。

日本は、90年代のバブル崩壊後、失われた30年と言われています。というのも、戦後の高度成長期のモデルをそのまま利用し、業界構造、産業構造をまったく変えずにきたからです。今となっては、円高になれば不況に陥る。いまだに、輸出産業に頼りきりで、変わらない”ツケ”を負わされていくことになるんですよね。

―不動産市況は、経済状況や株価のあおりを受けやすいという点が不安要素ですね。

はい。スイス本拠のグローバル金融機関UBSが昨年出した「UBSグローバル不動産バブル指数2018」というのがあります。そこでは東京は世界主要都市のなかで14位と、割高圏にあり、不動産バブルの煽りを受けていることがわかります。ただ、足元では金融緩和マネーが入っている国の都市でさえ価格は崩れ始めています。その崩れ方が他国に比べれば大したことがないだけで、ピークは去年、今年あたりだったとみています。

出典:UBS CIOウェルス・マネジメント『UBS グローバル不動産バブル指数 2018』

―どのくらいまで下落していくか問題になってくると思うのですが、その点はいかがですか?

先ほどより株価の話をしてきたのも、実は都心3区と日経平均株価は、ほぼ連動しているんですよ。それを前提に申しますと、リーマン・ショック級の不況が来たら、当時の株価は8,000円でしたので、私の試算では不動産価格は半分とまでは言いませんが4割安になると見ています。ただ、現在は当時と比較すると、低金利が市場を下支えしているので、4割より下がることはないとみています。

さらに、マイナス要因としてあげられることは、インフレ率はやや上昇しているのに、国民の実質所得は下がっている。消費増税の影響で、借り主が賃料を払えないということもありえるのです。

―実体経済が悪いと不動産賃料も支払えない。消費増税でさらに拍車がかかり、不動産市況は芳しくないと。

はい、そうですね。都心の超一等地や郊外・地方の駅前、駅近といった価格が上昇・維持するエリア、なだらかに下落するエリア、底なしに価格が下落していく廃墟のようなエリアの3つからなる三極化の構造は変わりません。上昇・維持のエリアは極めて限定的です。全体の70%はだらだらと下がり、あとは、値下がり率の問題となってくるでしょう。それが年率3%ずつなのか、もしくは4%なのかというお話です。

―比較的、1都3県は維持もしくは緩やかな下落と言われていますが、ここは危ないといったエリアはありますか?

ベッドタウンのようなところは、若年層の流入が減ってくるので、手を打たないと厳しくなるでしょうね。

―次に、不動産市況が今後激化していくことが予想される中で、不動産会社はどのような構造になり、生き残りをかけるためにやるべきことは何でしょうか?

不動産事業の「AI化、ロボット化」といったところでいうと、確実に人手は減っていくでしょうね。特に賃貸管理の部門は、以下の2つのいずれかに分かれていくと思います。「管理費」の安さで勝負する会社と、従来型の管理会社ではなく、不動産所有者の資産価値を最大限活用化するためのアドバイスを行う会社です。

後者は、管理費を8~10%にするのか、所有者の資産が増えたらその分の何%を取るかといった方法かわかりませんが、分かれていくことが予想されます。後者のサービスを提供する企業は、今よりも高い報酬を得ていくことになるでしょうね。

―どんなにAI化やロボット化が進んでも、人の手が介在する分野だけは残っていきそうですね。

「築何年のものを何戸持っている」とAIに言ったところで、限界はあります。人間の脳でないと判断できないアドバイスやサービスは残っていくと思います。相手の気持ちや感情を酌み取ってコンサルティングすることが今後求められます。

―AI化、ロボット化は、他業界においても6年後には浸透していくと聞きますが、不動産業界にも同じことは言えますか?

もちろんです。昔、レインズっていうものがあったよね、といった時代が来ますよ。不動産売買のような相対取引も、ブロックチェーンの仕組みを取り入れることは不可能ではありませんからね。現に、アメリカのいくつかの州では、物件の登録から契約、登記までブロックチェーンの仕組みを取り入れています。

そうすることで、地面師や情報の囲い込みなど無くなっていくと思います。物件の内見も、スマートロックやオンラインで可能です。最後は、ヒューマンタッチなものしか残りません。ですから、「人材育成」や「ヒューマンリソースを大切にする」ことがカギになってきます。

―日本ではまだそのような兆しはないですが、いつ頃までには導入されるとみていますか?

遅くても、2030年には実現しているのではないでしょうか。令和に切り替わり、時代は急速に進化しています。今後もさらにより公正・公平な取引が行われる市場になっていきますよ。

―ヒューマンタッチな部分については残っていく。そして、最終的には、コンサルティング業務などができる「人」だけが残っていく業界へと変わっていくのですね。本日はありがとうございました。

さくら事務所(東京都渋谷区) 会長
長嶋修 氏
業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。著書・メディア出演多数。YouTubeでも情報発信中。

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