不動産売買の現場では、主に残代金決済時、金融機関の応接室などで司法書士が皆様にお会いしています。いつも取引の最後に顔を出してあれこれお願いをしておりますが、そもそも我々司法書士が不動産売買においてどのような役割を果たしているか、あらためて解説します。
司法書士が不動産売買に立会をさせていただく意味は「円滑な取引のための助力」と言われており、具体的には取引の関係当事者の同時履行を担保する役割です。
一般的な不動産売買では、①融資銀行、②買主、③売主、④抹消銀行の4者が当事者となりますが、この4者は以下のようにお互いの利害が対立しています。
①融資銀行「住宅ローンの融資を実行したいので、まず売主さんは買主さんに権利証を渡してください。一番抵当権が設定できなければ困るので、抹消銀行さんの抵当権も先に抹消してください。
②買主「売買代金を支払ったのに、登記を自分に移せなかったら困ります。権利証を先に渡してください。売主さんの抵当権も先に抹消してください。」
③売主「登記だけ移ってしまって、売買代金が貰えなかったら困ります。権利証より先に売買代金を支払ってください。そうしないと抹消銀行さんの債務を完済できません。」
④抹消銀行「とにかく売主さんの債務が全額支払われないと、抵当権は抹消できません。先に全額お支払いください。」
このように関係当事者がそれぞれの立場から希望だけを言い続けていると不動産売買は完結しません。そこで司法書士が登場します。司法書士は事前に双方の銀行を含む全ての当事者の必要書類の内容等を確認した上で、取引当日、融資銀行に融資の実行を許可するのです。
売買代金が着金するまではどうしても権利証を渡したくないという売主の方のお考えも十分理解できるところです。司法書士としては融資実行前に権利証原本を手に取って内容を確認し、着金が確認できるまで売主様の目に届く範囲でお預かりする、ということになります。