不動産オーナーが確定申告時に考えるべきポイント

年が明け、確定申告の時期に入りました。不動産オーナーの中には、毎年ご自身で確定申告をされている方も多いと思います。安定した賃貸経営のためには、経営上のコストとしての税金の額をきちんと把握し、コントロールしていくこと、また、安易な「節税」に走らず、しっかりと資産の基盤を作っていくことが重要です。

<今後の事業計画のために>

確定申告の時に作成する決算書は、自分が一年間どのような経営をしてきたかの通信簿のようなものです。申告書を作る機会に、自分は財産を増やせるような良い経営をしてこられたのか、それとも思うような結果が出せず財産を目減りさせてしまったのか、内容をよく確認しましょう。お勧めなのは、前年比較で数字を見ること、また、物件ごとに収支を見ること、です。

・前年比較でのチェック

不動産賃貸業の場合には、新しい物件を購入した年を除くと、売上は年ごとにあまり大きな変動はないのが通常です。経費についても、普通に経営していれば大きな変動は無いハズですが、前年に比べて無駄な出費をしていなかったか、逆にもっと工夫して経費計上ができなかったか、などを確認し、問題がある点は修正をしていきましょう。前年だけでなく、3年比較や5年比較などで数字を見ると、より、年ごとの変動額がわかり、今後の賃貸経営改善のための良い参考になると思います。

・物件ごとの収支チェック

複数の物件を所有している場合に、年間の合計の収支、ということだけで見てしまいますと、良い状態の物件と赤字になっている物件とが混在してしまい、正確な経営判断ができない可能性があります。物件ごとにわけて収支状況をチェックすることで、次にどのような物件を購入するか、既存の物件のどこに注力すれば良いか、などの判断指標になります。

<「節税」のために>

税負担を抑えるためには、常日頃から事業に関わる経費については領収書を整理し、保存しておくことが大事です。塵も積もれば山となりますので、日々の細々とした経費をしっかりと帳簿に付け、計上漏れが無い様にしましょう。

・プライベート費用との区分

個人事業の場合には、事業上の支出と、プライベートの支出が混ざってしまったり、明確に区分できないケースもあります。このような場合には、何かしらの合理的な方法で按分し、事業供用部分を経費に算入しましょう。家賃、光熱費、通信費、自動車関連費用など、事業として使用していると認められる部分があれば、経費に入れる余地はあります。経費に入れられる割合は実際の利用状況次第なので、○%ならOKで○%だとダメ、というような画一的な判断基準はありません。自分自身の状況を基に割合を計算し、計上根拠を問われた時に説明できるような資料を準備しておくと良いでしょう。当然のことながら、全く事業で使用していないものを経費として計上することは問題がありますのでやめましょう。

・減価償却費の計算

不動産賃貸業の場合、大きな経費としては、減価償却費があげられます。新しく建物を建築、購入した場合や、大規模リフォームを行った場合などは、その経費計上の仕方で税金に大きな影響を与える可能性があるので、慎重に申告作業を行いましょう。

減価償却資産は、その種類・構造により耐用年数(償却期間)が決まっています。新しく建物を建築した時は、その費用が建物本体の費用なのか、付属設備の費用なのか、外構工事の費用なのか、などを細かく区分することで、それぞれの資産に振り分ける金額が変わり、結果として各年の減価償却費の金額が変わります。

また、リフォームをした場合には、「修繕費」(原状回復や維持管理のための支出)として経費に入れるのか、それとも「資本的支出」(資産価値の向上や耐用年数延長のための支出)として資産に計上して減価償却により経費化していくのか、ということを判断する必要があります。

これらは長期間かけて経費化するのか、それとも短期間で経費化するのかの違いであり、長い目で見れば、トータルで経費となる金額は変わらないものの、各年の損益計算上は違いが出て来るので、目の前の「節税」を考える場合にはどのように減価償却をしていくのかをよく検討したほうが良いでしょう。

<経営基盤の強化のために>

昨年は新型コロナウイルスの影響で、経済活動に大きな打撃を受けました。不動産オーナーの皆様も、少なからずその影響を受けていらっしゃるかと思います。不況期において、いざという時に頼りになるのは、手元にある現金です。「節税」をしたい方は、税金を払うくらいなら経費で使ってしまおう、と考えがちですが、多くの場合、節税行為にはキャッシュアウトが伴うことを意識しておく必要があります。節税をしているだけではお金は溜まっていきません。無駄な税金を払う必要は無いと思いますが、適正な税金は経営上必要なコストと割り切って、しっかりと税引後の利益を溜めていく、上手く資産運用をして財産を増やし、結果として払う税金が増えたとしてもそれ以上に手取り額を残せるようにする、という意識が、今後よりいっそう大事になっていくと思います。

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