義父の突然の他界 経営のノウハウ伝承の重要さを知る

廣田裕司オーナーは、神奈川県藤沢市の地主の三人姉妹の長女だった奥様と三十数年前に結婚。廣田家の婿養子となったことがきっかけで、賃貸経営に参画するようになりました。結婚当初は、土木関係の仕事を行い、公務員と兼務で不動産事業を行う義父の背中を見ながら、「ゆくゆくは、自分も義父同様に会社員と兼務で不動産の運営を行っていければ・・・」と思っていました。

結婚二十年後、廣田家の財産を管理する資産管理会社を義父が設立。廣田オーナーも役員になり、税金面のやりくりや申告方法に関して、税理士さんとの折衝などはやっていました。しかし、賃貸住宅を建てるのは初めての経験でした。

ところが、2棟目の新築賃貸住宅をさぁいざ建設しようという時でした。それまで、賃貸経営を一手に引き受けていた義父が病に倒れ、入院から1カ月という短期間で帰らぬ人になってしまったのでした。

「ああ、もっと廣田家にしか通用しない賃貸経営ノウハウやルールなど、お義父さんから学んでおけばよかった・・・」。そんな気持ちにさいなまれました。

しかし、いつまでも悲しみに思いふけっている場合ではありません。

不動産経営は順風満帆でしたが、「一体どこの不動産管理会社に管理を任せているのだろう。担当者はいったい誰だろう」。義父なき後、廣田オーナーは不動産会社やその他の業者とのやり取りを行うために、連絡先を探すことに必死でした。

不動産会社に物件の管理を任せていることは知っていましたが、どこの会社か把握していなかったため、慌てて確認することになりました。

ところが、義父の他界からほどなくして、リーマンショックが起きました。藤沢市内にある大手自動車会社では派遣社員の雇い止めが起きました。廣田オーナーの築15年の単身者向け賃貸住宅にも影響が出始めたのです。空室期間が長期化するという初めての危機に直面したのです。

未曽有の出来事に頭を抱えた廣田オーナーは、現状を打破するために会社を退職。家業に専念することにしました。しかし、土木建築やビジネスなどには長けていても、賃貸経営はほぼ初心者も同然。「とにかく体系的に賃貸経営の全体像を掴むために、出ている本は、片っ端から読んで勉強した」という廣田オーナー。不動産コミュニティー(J-REC)に通い、不動産経営を体系的に学びました。

もともと土木・建築の会社員として働いていた経験も奏功し、「賃貸業界の市場価格が、一般的な工事費用と乖離があり、高いということがわかりました」(廣田オーナー)。信頼のおける紹介者から適正な価格で資材を調達し、さらに、こだわりの空間を創出することに成功しました。

それから時を経て「今」。廣田オーナーには新たな挑戦があります。

それは、かつて自身の義父の突然の他界でたくさん学びたかった経営に関するノウハウの承継を、どうやって行っていくかということです。

「生前、義父から不動産を新築するときは、借金は総賃料の50%までにするように言われました。今思うと、それが廣田家の経営ノウハウだったと思います。もっとたくさんのことを学びたかったという悔しさがあります。実家を継ぐ娘には、賃貸経営に慣れてもらえるように、今は事務的なことなど役割分担をしながら、妻と私の手伝いを少しずつ見よう見まねで任せています」(廣田オーナー)

認知症の発生、事故による寝たきりなど、老若男女問わず何が起きるかわからないのが人生。わかっているけど、まだなにも手を付けられていないという方は、ご自身が元気なうちに、「万が一」のことを家族で話し合うことも有効ではないでしょうか。

廣田裕司オーナー
(神奈川県藤沢市)

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