改正民法下での賃貸借の個人保証 ~ シリーズ1

Q. 弊社は、2020年5月にマンションの1室をAに賃貸した際、その親族Bが連帯保証人となってくれましたが、賃貸借契約書には保証の極度額は定めませんでした。しかし、契約締結してしばらく後から、Aは会社をリストラされたなどと言って賃料を滞納し、そのまま数か月後には行方不明となり鍵は送り返してきました。

室内を見ると浴室などがゴミであふれ大変汚れていました。改正民法の下で、連帯保証人Bに対して何か請求できますか。

A. 結論としては改正民法下、連帯保証人Bに対して何ら請求はできません。改正民法の下では、変動していく債務(特定しない債務)について個人が保証人となる場合(「根保証」と呼ばれます)は、保証の対象となる債務について極度額つまり保証の限度額を定めなければならず、極度額を定めない保証契約は無効となります。

たとえば、賃貸借契約では、賃借人は滞納により未払い賃料や原状回復債務などを負担していき、そうした債務は一定しておりませんので、その保証は根保証にあたり、保証契約書に極度額の定めをしないと保証は無効となります。その場合、賃貸借契約自体は有効であり、賃借人への請求は可能ですが、保証人への請求はできなくなります。

貴社のケースでは、賃借人Aが賃料を滞納し、そのまま数カ月後には行方不明となり鍵は返してきたものの、賃借室内は浴室などがゴミであふれ大変汚れていたので、賃借人Aは、貴社に対し、滞納賃料の支払義務の他に、賃借物件を汚損し用法違反ないし、善管注意義務違反による損害賠償義務ないし、原状回復義務も負います。

そして、従前の民法のもとであれば、連帯保証人Bはそうした賃借人Aの債務を保証しますので、貴社は、Bに対しAと同様の義務の履行をすることとなります。


しかし、本件では、貴社の賃貸借契約も保証契約も2020年5月、つまり改正民法の施行後に締結されていますので、改正民法の適用があり、従前の民法の適用はありません。

これによりますと、前記した通り、貴社は、個人Bとの連帯保証契約については、保証の極度額の定めをしておかなければならず、それをしていなかったのであれば、Bとの連帯保証契約は無効という厳しい結果となります。

従って、残念ながら、Bに対して損害賠償請求はできないということとなります。

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