【Q&A】保証の限度額の定めのない連帯保証契約は無効

2020年4月1日から新しい民法が施行されました。不動産ビルオーナーに、どのような影響が生じるのでしょうか?連帯保証人制度の重要な変更点をQ&A形式で解説いたします。

Q. 貸しビル業を営む弊社は、2020年5月にA氏にマンションの1室を賃貸し、A氏からの委託で親族B氏が連帯保証人となります。その際の契約には改正民法の適用があるとのことですが、賃貸借契約書にどのような連帯保証条項を定めたらよいでしょうか。

A. 国土交通省が改正民法に備えて提供している賃貸住宅標準契約書の平成30年3月版ひな型が参考になります。

1. まず、最高裁平成9年11月13日判決によれば、賃貸借契約が更新された場合は、特段の事情がない限り連帯保証契約も有効に維持されますので、連帯保証条項に次のように明記します。

→従前の記載に下線部が加わります。

第1項 連帯保証人(丙)は、賃借人(乙)と連帯して、本契約から生じる乙の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても同様とする。

2. 次に、改正民法の下では、変動していく債務の保証(根保証といいます)を個人がする場合、保証の対象となる債務の極度額つまり保証の限度額を定めなければならず、そうしないと保証契約は無効となります。

賃貸借契約も、賃借人は滞納などにより未払賃料や原状回復債務などを負担し、そうした債務は一定していませんので、その保証は根保証にあたり、連帯保証条項に次のような極度額の定めをする必要があります。

第2項 前項の丙の負担は、極度額○○円を限度とする。

3. さらに、改正民法では、根保証において、主たる債務者または保証人が死亡した場合は、元本が確定し、その後に発生する債務は、保証されません。

そこで、賃貸借契約では、賃借人または保証人が死亡すると、以後の賃借利用により生じた滞納賃料や損害賠償債務などは、連帯保証人(またはその相続人)は保証しないこととなり、次のような条項が定められます。

第3項 丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときは、確定するものとする。

そこで、賃貸人としては、乙又は丙が死亡した場合でも、今後のために連帯保証人を確保してもらう約定を設けるべきでしょう。賃貸住宅標準契約書のひな型にはありませんが、第3項には、次のように付記するとよいでしょう。

この場合、乙が死亡したときは、乙の賃借人たる地位の相続人は、すみやかに丙または新たな連帯保証人に保証委託するものとし、丙が死亡したときは、乙は、すみやかに新たな連帯保証人に保証委託するものとする。

4. 次に、従前、連帯保証人は、主債務者たる賃借人の賃料の支払い状況については賃借人の協力でもない限り知ることができず、賃貸人に聞いても個人情報として教えてもらえないとの事情がありました。

しかし例えば賃貸借契約の更新の際に、賃借人の賃料支払い状況が良くなければ連帯保証契約は更新しないとの選択もできたはずでした。そこで、連帯保証人を保護するために、改正民法では、連帯保証人が賃貸人に請求したときは、賃貸人は、賃借人の賃料・共益費等の支払い状況や滞納額など債務についての状況を提供する義務があると定めました。賃貸人は、これを怠ると連帯保証人から損害賠償を請求されることもあります。

なお、この場合は、連帯保証人が個人でなく法人であってもその保護の必要は同様に考えられますので、連帯保証人が個人の場合には限定されていません。

そこで、以下の条項を設けます。

第4項 丙の請求があったときは、甲は、丙に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払い状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。

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