どうなる?「配偶者居住権」のゆくえ

Q. 妻が夫の相続後も自宅に住み続けたい場合、どのようにすれば良いでしょうか。

自宅を相続してしまうと評価額が高いため、預金をあまり相続することができず困っています。

A. 自宅の所有権を相続するのではなく、配偶者居住権を相続すればよいと思います。

配偶者居住権とは、民法の改正により2020年4月1日以降に新設された制度です。
この配偶者居住権を遺産分割協議又は遺言で取得したときは、自宅の所有権を他の相続人が取得したとしても、家賃の支払いなく、存続期間の定めのないときは終身、期間が定めてあるときはその期間、自宅に住み続けることができます
この配偶者居住権は、自宅の所有権よりも評価額が低いため、その分今後の生活費などのために使う金融資産を相続することができます

(1)配偶者が自宅の所有権を相続する場合

配偶者子A子B
土地5,000万円
建物1,000万円
預金3,000万円3,000万円
6,000万円3,000万円3,000万円
相続分50%25%25%

(2)配偶者が配偶者居住権を相続する場合

①配偶者居住権の評価

1,000万円-1,000万円×{残存耐用年数(23年)-存続年数(25年)}÷23年×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率(0.478)=1,000万円
※残存耐用年数 法定耐用年数(22年)×1.5-築年数(10年)=23年

②配偶者居住権の敷地の利用に関する権利

5,000万円-5,000万円×0.478=2,610万円

配偶者子A子B
土地2,610万円2,390万円
建物1,000万円
預金2,390万円610万円3,000万円
6,000万円3,000万円3,000万円
相続分50%25%25%

なお、自民党の税制調査会によると配偶者居住権の敷地の利用に関する権利は、小規模宅地等の減額特例の対象になると発表されています。

配偶者居住権のポイント

  • 自宅の所有権を配偶者以外が取得しても、家賃を支払わなくても、住み続けられる
  • 自宅を相続しない代わりに、金融資産を相続することで、老後の生活費を確保できやすくなる

SNSでもご購読できます。

人気の記事