入居者に献身的なサービスを提供することで、信頼を獲得

わたしは約80戸の賃貸住宅すべてを自主管理しています。所在地は東京都、千葉県、神奈川県とバラバラで、一番遠い物件は高速道路を使って3時間半ほどの場所にあります。ですが、トラブルがあればすぐ飛んでいく体制を取っています。

「大変ね」と大家仲間には言われますが、そう感じたことは一度もありません。

ある日の深夜、泣き出しそうな声で入居者さんから電話がありました。大学時代体育会系だった彼は礼儀正しい青年です。



「大家さん、バスタブが…」

「どうなさいました?水があふれてしまったのですか?」

「いえ、その…」



そこのバスタブは小さいサイズで、彼のような大柄な男性には少し窮屈な大きさです。彼の声はその体格とは裏腹に、聞き取れないくらい小さなささやきのようでした。そして話を聞くとこうでした。

いつものように帰宅して、バスタブに浸かり、いざ立とうとしたら、体がはまってしまいどうにも抜けられません。1人暮らしのため助けてくれる人もおらず、1時間くらいもがいていたら、偶然バスタブを蹴ってしまいました。なんとか立つことはできましたが、バスタブに大きな亀裂を入れてしまったというのです。

ただどうやったらバスタブが壊れるのか、わたしには皆目見当がつきませんでした。運悪く3点ユニットバスのお部屋だったので、取り替えると70万円ほどします。これは大家にとっても痛い金額ですが、若い入居者さんにとったらもっと痛い額でしょう。

そこで、インターネットであれこれ調べたら補修剤で直せることがわかりました。



後日、電話をすると、

「ぼく、修理費が心配で眠れませんでした」

彼はそう言いました。



「大丈夫ですよ。わたし、直せますから」

と一言言うと彼はなんと、

「ぼくも一緒にお手伝いします」

と言ってくれました。



これをきっかけに、次第にお互いがより信頼できる関係になりました。彼は毎回、行くたびに帰り際、わたしを車まで見送り深々とお辞儀をしました。

「はい、では」といってドアを閉める入居者さんがほとんどですから、彼にはいつも驚かされます。また彼のためにお役に立てたことが心からうれしい気持ちになりました。

ここ最近では、カギのトラブルやガラスのヒビ割れなどの「24時間駆け付けサービス」があり、大家の負担で加入して、入居者さんが遠慮なく頼める環境を作っています。


入居者に感謝されるような部屋作りに努めている

また今回のように「室内損傷」といえば、入居者さんの退去時の原状回復があります。今まで良好な関係を築いていたのに、退去立会いで態度が急変する人もいます。そういうときには、大家がストレスを抱え込む時間と心情を思うと、さっさと自分でなんとか直して、新たに入居者募集をしたほうが得策だと考えています。

また大家さんの中にはプロ顔負けのアイデアや工夫をしている方も多くいます。そういった方のお話を聞くうちに、いつしかわたしもDIYをやることが面白く感じるようになりました。

入居者さんに直接連絡をいただくので、わたしの自主管理は24時間勤務と同じで、夜昼問わず、盆も正月もありません。

ただわたしは根っからの「お節介タイプ」で、なおかつ「超せっかち」なので、スピード感を持って対応しています。ときには勘違いされて怒鳴られてしまうこともありますが、それはそれで生の声として受け止め、日々大家として信頼してもらい、「この大家さんの物件を選んでよかった。安心して暮らすことができる」と言ってもらえるよう、日々心がけています。

そう、まるで一流ホテルのコンシェルジュのように。

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