AI時代に求められる人の役割とはその先にある”ビジネス”の活路
AI化、ロボット化が進むと、不動産会社の役割はどのように変化していき、人にしかできない分野とは一体どんなことなのでしょうか?
2016年11月から、360度のパノラマ画像の制作・編集を簡単にできるクラウドソフトウェアを提供し、2000社以上の導入実績があるスペースリー(東京都渋谷区)のCOO 中嶋雅宏氏にお話を伺いました。
同社では現在、精度の高い画像解析を可能にするAIの研究開発を行っています。多くの画像データをAIに学習させることで、”画像だけ”で入居希望者は部屋の採寸ができ、不動産会社やリフォーム会社は部屋の原状回復費用の見積もりが将来的には可能になるそうです。つまり、現地に行く手間とコストが削減できるというわけです。
WEB上で完結化へ
「AI化が進んだことで、いままで有人で行っていた内見業務もWEB上で完結するケースが増えています。現に、スマートフォンが普及し顧客の行動パターンは変わっています。というのも、現地を見なくても物件を決められるほど、情報が豊富にあるからです」
(中嶋雅宏氏)。
変化は、これだけにとどまりません。賃料相場や物件の利回り計算、どの物件がより収益性が高いかといった判断はAIが得意とする分野なので、どんどん取って変わられていくのだとか。もはや不動産会社の担当者ができることは、限定的なのではないのか!?
AI時代に求められる人の役割について、中嶋氏は”AIを活用すること”と、”人間にしかできないホスピタリティーを提供すること”の2種類になると考えます。「例えば、アズ企画設計さんが行っているアズサロンも日取りや人数設定の最適化は、AIができるでしょう。しかしお客様をおもてなしすることは、担当者つまり人間にしかできません」(同)
独自のルート構築を強みに
独自の物件情報の収集・販売ルートを持っていることや、ルート形成のための円滑なコミュニティーを築いているかどうかは、”人間にしかできない”ホスピタリティーに関わることなので、担当者の役割が重要になってきます。つまり、すべての業務がAIに取って代わることはないのです。
同社が提供するWEBコンテンツは、閲覧者の記録が残るので、追客ツールとしては最適といえそうです。というのも、お客様はいつも不動産のことを考えているわけではありません。しかし、物件のパノラマ画像を見始めると、担当者のところへ閲覧通知が飛んでいきます。これにより、いつ相手にアプローチするのが良いか予測を立てることができるのです。
「写真上のリビング、ダイニング、キッチン、寝室に誰がどのくらい滞在していたのか記録されますので、お客様がどの部分に興味を持っているのかわかります。相手の関心事を知ることで、営業トークでどんな話をするのが良いか作戦を練ることができ、成約率アップも狙えます」(同)
追客ツールを活用することでホスピタリティーを提供するという、人間にしかできない部分は販売、仲介や管理といった分野では特に色濃く残っていきそうです。
スペースリー(東京都渋谷区)
COO 中嶋雅宏 氏
東京大学卒業後、2003年 三井住友銀行入行、2006年からのBNPパリバ証券を経て2016年より現職。「全国賃貸住宅新聞」にコラムを連載中。株式会社スペースリーの管理部門、営業、マーケティング部門を担当。