児玉譲

弁護士に聞こう! 【共有者が所在不明の不動産の買受2】

(質問)
A、B、Cの3人が共有する都内の土地と建物は、空き家で荒れ放題ですが、場所は悪くないので、弊社は是非とも買い受けたいと思います。A氏とB氏は売却を望んでいますが、C氏は数年前から所在不明で一切連絡がとれないとのことです。A氏もB氏もC氏の共有持分を買い取る余裕はなく、C氏の共有持分を含めてその不動産全体を売却希望です。

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弁護士に聞こう!【賃料保証会社により未払賃料の支払いがなされた場合、賃貸人は賃料不払で契約解除できますか。】

(​質問)
 弊社は、テナントA社のために、賃料保証会社と保証契約を締結しており、A社の賃料不払いが既に4か月続く中、その都度賃料保証会社から不払い分の支払いを受けています。しかし、最早A社は信頼できないので、契約を解除したいと思います。賃料保証会社からの支払いにより賃料は全て回収できている現状で、契約解除は可能でしょうか。

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弁護士に聞こう!「賃借人が賃料保証委託契約を解約した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できますか」

(質問)弊社は、賃借人Aとの賃貸借契約において、Aが賃料保証会社に保証委託すること、そして賃料は賃料保証会社からの振り込みとするという特約を設けていました。
しかし、Aは、賃貸借契約を締結して間もなく、保証料の負担を嫌うようになり、保証会社との保証委託契約を解約して、賃料を直接弊社に振り込んできました。
そして、Aは、弊社が振り込みを拒絶すると今度は供託するなどして、弊社との対話にも応じません。
弊社としては、Aとの賃貸借契約を解除したいと思いますが、可能でしょうか。

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中途解約の場合の残存期間の賃料の支払

中途解約の場合の残存期間の賃料の支払

(質問)

弊社は、都心に新築したビルのワンフロアを、A社にオフィス用途にて期間5年として賃貸し、特約に、賃借人A社が期間満了の前に中途解約するときは、違約金として期間満了までの残存期間の賃料を一括して支払う旨を定めていました。ところが、契約から1年後に、A社は、コロナ禍でのテレワークで賃借フロアが過大になったとして中途解約を申入れてきました。
弊社は、特約通りに残存期間の賃料の一括払いを請求できますか。

(回答)

前回は、中途解約の場合特約通りに残存期間の賃料の一括払いを請求できるかについて、東京地裁平成8年8月22日判決を挙げ、こうした場合の違約金の相場は、残存期間の賃料全額ではなく1年分程度であろうとする見方もあることを紹介しました。
しかし、賃借人がある程度規模のある会社で諸々の取引にも精通し、あるいは対象物件の賃借のニーズから、違約金条項など十分理解した上で契約したような場合、残存期間の賃料全額を違約金とする特約を有効と認める判例もあるので、貴社のケースでも参考にすべきです。

そうした判例のひとつ東京地裁平成20年1月31日判決は、賃借人がコンビニ営業する会社で、期間は10年間、中途解約の場合は残存期間の賃料を一括して支払うとの特約のもと、賃借人が契約から3年未満で中途解約したケースです。
判決は、本特約は、賃借人が、対象建物でのコンビニ営業の機会を競争他社との競争で勝ち取りたいがために、あえて自己に不利で賃貸人に有利な条件提示をした結果、賃借人が期間10年分の賃料収入を賃貸人に確保させるべく特約を結んだと認定しました。
そこで、特約は中途解約の場合の残存期間の賃料全額相当の賃貸人の損害を填補するものとして有効であり、残存期間の賃料請求はできる旨判示しています。 

 もう一つ、東京地裁平成22年6月24日判決は、賃貸人は大手不動産会社の組成したファンド会社、賃借人はブリヂストンの子会社で、期間3年、賃借人は中途解約ができないが、期間満了までの残存期間の賃料を一括して支払う場合は中途解約できるとの特約のもと、タイヤ保管用の倉庫を借りたが、3か月後に中途解約の申入れをしたケースでした。
判決は、賃借人は、残存期間の賃料支払義務を免れないことを認識して契約締結していると認定し、更に、賃貸人が新たな賃借人と賃貸借契約を締結して旧賃借人からの賃料の他に賃料をダブルでとる場合もあることを当然に予想していたとまで認定して、賃貸人が解約後に第三者に賃貸して賃料を取っていても、賃借人に対する残存期間の賃料請求は許される、と判示しました。

【弁護士に聞こう!】ライフライン停止の場合の賃料は?

(質問)
 弊社は、所有する建物の1階フロアを飲食店テナントAに賃貸していますが、最近の災害によって、建物そのものの損傷はなかったものの、地域の電気、ガス、水道などライフラインが停止し、それぞれ2週間もの日数が経過してやっと復旧しました。テナントAからは、その月の賃料(30万円)の半額程度の減額を要求されていますが、応じるべきでしょうか。

(回答)
 民法第611条第1項によれば、賃貸物件が一部滅失その他の事由で使用収益ができなくなった場合は、賃借人の帰責事由によらないときは、使用収益できなくなった部分の割合に応じて賃料が当然に減額されるものとされています。貴社の相談事例のように、賃貸建物自体に「一部滅失」という損傷がない場合でも、「その他の事由により使用収益ができなくなった場合」には賃料減額となります。

 テナントAのケースは、電気、ガス、水道などのライフラインの停止という賃借建物の一部滅失以外の「その他の事由により使用収益ができなくなった場合」と考えられます。この場合は、前記の民法の規定により、使用収益が妨げられている期間つまりはライフラインが停止している期間の賃料の減額が認められ、賃貸人である貴社は、賃料の減額を認めざるを得ないでしょう。

 問題は、どれだけの減額になるかです。前記の民法の定めでは、賃料の減額の程度は、「使用収益ができなくなった部分の割合に応じて」とされていますが、法令や判例上特に基準があるわけでもありません。賃貸借契約書に定めがあればそれによりますが、多くは定めがないでしょう。一つ参考となる(公財)日本賃貸住宅管理協会の「設備等の不具合による賃料減額のガイドライン」によれば、電気や水道の停止の場合はいずれも賃料月額の3割減で修繕完了日(但し2日間は控除)までの日割り計算、またガスの停止の場合は賃料月額の1割減で修繕完了日(但し3日間は控除)までの日割り計算をして、減額分を算定します。貴社の事例では、復旧に2週間要したとのことで、ひと月30日として、電気や水道では、各々、30(万円)×0.3×(14-2)/30=3.6(万円)、ガスでは、30(万円)×0.1×(14-3)/30=1.1(万円)、三者合計8万円程度の減額が目安となるでしょう。

 これによれば、テナントAの主張する賃料の半額の減額要求は過大でしょう。