知っておきたい税務の知識 【電子帳簿保存法の改正内容について】

 昨年末に、「電子帳簿保存法」の改正に関する話題が、一時期、取り沙汰されました。

 しかし、そもそも電子帳簿保存法って何だ?という方も多くいらっしゃることと思います。
 本コラムでは電子帳簿保存法について、簡単にご紹介したいと思います。

<電子帳簿保存法とは>
 電子帳簿保存法とは、簡単に言うと、法人税や所得税など、国税の申告のために使用する資料を紙の書類ではなく、データで保存するための方法を定めた法律です。

 従来、税務関係の帳簿書類などは、紙での保存が原則とされてきましたが、
近年の電子化の流れを考慮して、資料をデータ保存することを認める(一部強制)方向になってきています。

 それにより、紙をファイリングする手間や、書類の保管スペースが不要となる他、資料を日付や取引先名で簡単に検索できるようになることで、探したい書類がすぐに見つけられること等がメリットとして挙げられます。

<改正による主な要件緩和>
 データでの保存がOK、と聞くと、楽だなあ、と思う方も多いでしょう。
 手許にある資料を片っ端からスキャンして、原本は捨ててしまってOK、であれば、確かに書類の管理も楽になると思います。

 しかし、電子帳簿保存法でいうデータの保存とは、書類を単純にスキャンしてPCのどこかに入れて置けば良い、ということではなく、国の定めたルールに則って保存をしておくことが求められています。

そのハードルが高いため、導入がなかなか進まなかった、という経緯がありましたが、改正によりその要件が緩和されています。

1事前承認制度の廃止
 これまでは、そもそも、スキャナ保存をする場合には、事前に税務署の承認を受けることが必要とされていました。

そのため、事前承認を受けずに勝手にデータで保存して、紙の原本を破棄した場合には、帳簿保存の義務を満たしていないこととなってしまっていました。

改正電子帳簿保存法では、事前承認が不要とされたため、いつでも電子帳簿保存を始めることができるようになりました。

2タイムスタンプ要件の緩和
 データで保存して原本を破棄してしまう、となると、例えばデータをコピーして使い回したり、日付や金額を改ざんしたり、という不正利用をされてしまう恐れがあります。

 そのような不正が行われないように、電子帳簿保存法のルールでは、「タイムスタンプ」を付し、タイムスタンプが付された日時に確かにデータが存在したこと、また、その後改ざんされていないこと、を証明する必要がありました。

 改正により、このタイムスタンプ要件が緩和され、資料受領からタイムスタンプ付与までの時間的な余裕ができたことや、訂正・削除履歴を確認できるシステムを使用することでタイムスタンプを付与しない方法も検討できることとなりました。

<改正による義務化>
 上記は、電子帳簿保存のための要件を緩和し、電子帳簿保存をしたい人が、導入しやすくなるような手当てがされた、という改正内容ですが、
一方、「電子取引」については、データ保存が義務化されることとなっています。

  電子取引とは、電子メールで請求書をやり取りしたり、インターネット上でホームページから領収書をダウンロードしたりすること等が該当します。

 これまでは、これらの書類は印刷して紙で保存していても良かったのですが、改正後はデータでの保存が義務化され、紙での保存が認められなくなります。

※2022年1月より、このような取り扱いがされることとされていましたが、2年間猶予が設けられ2023年12月までは引き続き紙での保存も認められています。

<まとめ>
 コロナ禍になってから急速にテレワーク化が進んでいますが、電子帳簿保存により経理担当者もテレワークにより仕事を完了できることなど、業務の効率向上に繋がることが期待されています。

 便利になる一方で、来年から始まるインボイス制度とも関連し、帳簿書類の適正な保存が強く求められることになります。

 電子取引のデータ保存義務化は2年間猶予が設けられましたので、この2年の間に、これまでの帳簿保存の仕方を見直すとともに、今後の帳簿保存の仕方について検討しましょう。

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