不動産売買決済時のトラブル

今回は司法書士が関わる不動産売買決済時のトラブルをいくつかご紹介します。

◦仮差押?

 司法書士は売買による所有権移転登記を申請する残代金決済・引渡し当日の朝(又は前日の夕方)、必ず物件の登記簿をあらためて確認して「異常」の有無をチェックします。買主が問題なく登記簿上の所有権を取得できる状態でなければいわゆる残代金決済を行うことはできないからです。売主が別の第三者に既に不動産を売却済だった、という例はあまり現実的ではないかもしれませんが、実際にありえるのは売主が取引とは関係ない第三者から差押や仮差押をされていることが判明するというケースです。国や都道府県、税務署等の差押ということもありえます。事前に分かっている場合はともかく、ないはずのものが当日の朝に発覚すると、その日の決済はほぼ間違いなく中止せざるをえません。

◦実印が違う?

 残念ながらよくあるのは、引渡し当日、売主が持参した実印が印鑑証明書の印鑑と違うということです。正しい印鑑でなければ登記申請はできないため、正しい印鑑を当日中にご手配いただくしかありません。役所が近ければ、持ってきた印鑑の方を急遽実印として登録する方法に頼ることもあります。
 印鑑証明書の有効期限が切れていたり、記載されている住所が誤っていたり、原本ではなくコピーしかなかったりというケースもあります。役所が近くにあれば良いのですが、遠方で間に合わなければこれも当日の決済は中止せざるをえません。
 なお、当事者の方がマイナンバーカードを持っていたおかげで決済を中止しなくて済んだケースを私は経験しました。マイナンバーカードがあるとコンビニエンスストア等で印鑑証明書や住民票を発行できることを皆さんはご存じでしょうか?

◦権利証がない?
 平成17年3月に施行された不動産登記法の改正で、従前の登記済証は「登記識別情報通知」と名前を変えており、現在いわゆる権利証と呼ばれるものには、登記済証と登記識別情報通知の種類が混在しています。不動産の売却にあたっては、登記済証が必要であるケース、登記識別情報通知が必要であるケース、両方を用意する必要があるケースのパターンがあるのですが、これも例えば紛失が事前に分かっている場合はともかく、必要なものが足りていないことが当日判明すると、司法書士としては決済を中止せざるを得ないことがあります。

 決済前の司法書士による事前の確認は当事者の方々からすると何とも煩わしく感じられることもあるかもしれませんが、当日のトラブルを避けるために、関係者の皆さんの司法書士へのご協力をくれぐれもお願いしたい次第です。

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