【豪州不動産事情】5. 商業物件 ~仁義なきテナント引き抜き合戦~

オーストラリアには相続税がありません。名義書換料の数%だけ。日本のように三世代の相続で全財産を無くすと言われる国と違って羨ましい事です。そしてオーストラリアの一軒家には建物の登記がありません。固定資産税は土地に対してだけで、建物にはかかりません。借地権なんてややこしい権利が生じる事もありません。日本と不動産事情はかなり違います。

そうそう、今日は商業物件の話。例えばビルの一室をテナントに貸す際の賃貸借契約は、オーストラリアでは定期だけ。契約が切れると必ず終了!日本の借地権や借家権のように、安い賃料で長く居座られる事や、莫大な金額の立退料を支払う必要もありません。契約のわかり易さが豪州投資のお勧めポイントの一つです。

ただ契約終了と同時に退去を命じられるとテナントの立場が弱いので、それを補う為に最初から「この契約が切れたら次の数年間も契約更新するかどうかの選択権」をテナント側が持つ事ができます。これをオプション期間と呼び、例えば3年間の契約延長を2回まで繰り返す事が出来る権利で契約する場合、物件案内では3年+3年+3年と表示します。つまり基本契約は3年で終了しても、テナントが希望する場合は最長6年までオプション行使で延長する事が可能です。

また賃料は最初から値上げを前提にしている場合があり、例えば「毎年2%、又は政府が毎年発表する正式な物価上昇指数のどちらか高いほうで値上げ」という条件も。テナントが退出しない限り、収益還元法で計算すれば物件そのものの将来の価値の上昇が、ある程度は予測できる事になります。

現地で日本人はモテます…特に不動産仲介業者と弁護士から(笑)。パーティや会合では真っ先に話し掛けてきてくれます。きっと日本人を見ると一種のビジネスチャンスの香りを感じ取るのでしょう。不動産仲介業者といっても、アメリカ映画に出てくるような嘘八百を並べて売り付けようとする悪徳業者はいません。なぜなら売買も賃貸も全て双方の代理弁護士が行うので、おかしな事ができない社会だからです。売主と買主、建物の貸主と借主が顔を合わせる事すらありません。書類を送ってOKならサインされて戻ってきて、それで契約完了。良い弁護士をそばに置いておく事が商業物件を持つ上で重要になります。

商業物件オーナーにとって怖いのは、テナントの退出。日本人と違ってオージーは住居も店舗も場所を移る事に抵抗が無く、移転や退出が頻繁に起こります。それでは空き店舗をどうするか?他の建物からテナントを引っ張って来るのが手っ取り早い方法です。今でこそ日本でもレントフリーが一般的になりましたが、豪州では昔から新規契約の条件の一つ。広い貸し事務所を空室のまま無収入で置いておくより、早く次の入居者を確保したいものです。

実際にあった例ですが、オフィスビルの1フロアが空いてしまったビルのオーナーさん、隣のビルからテナントを誘致する事にしました。その白羽の矢が立ったテナント企業にはその時点でビルとの契約がまだ半年間残っていました。そこで誘致したいほうのビルのオーナーは「残りの期間の賃料を全額負担+引っ越し費用全額負担+内装とカーペットを新調+新たに3年契約を結んでもらう為に賃料1年間無料」という好条件を提示しました。こんなに良い条件なら、移転を断る会社のほうが少ないかも知れません。優良テナントを誘致する為には、これくらいの事をしないといけないと判断したのでしょう。因みに、この条件で優良テナントを引き抜かれてしまったのは、この私です。

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