【Q&A】耐震建物への改築に備えての普通借家契約の更新の際に期限付き合意解約をすることは認められるか

Q. 弊社は、旧耐震ビルを普通借家契約にて賃貸中でこのたび期間満了によりテナントと合意更新しますが、

2年後に新耐震建物への改築を具体的に計画しているので、更新の合意内容として、更新後の期間2年間とし、その期間経過により契約は解約するとの合意をしました。条件としては、この2年間は固定資産税の上昇にもこだわらずかえって賃料も安くし、また新耐震建物にはテナントは優先的に入居の交渉ができる内容で、テナントは了解していますが、法的に問題ないでしょうか。

A. 借地借家法では、期間満了の1年前から6カ月以上前までに、

更新をしない又は更新にあたり条件変更をするとの通知をしないと従前と同じ条件での更新となり、またそうした通知をしても正当事由が必要であるとして、普通借家契約のテナントを厚く保護しています。

そして、こうした規定に反する特約でテナントに不利なものは無効とされています。そこで、貴社のケースのように更新の際に更新後は従前の期間ではなく2年間で解約するという期限付合意解約は、前記の法規定に反しテナントに不利な特約として無効ではないか、との問題があります。

これにつきましては、最高裁昭和44年5月20日判決は、土地賃貸借の例で、「賃貸借の期限付合意解約は、合意に際し賃借人が真実解約の意思を有していると認めるに足る合理的客観的理由があり、かつ他に右合意を不当とする事情の認められない限り」賃借人に不利な特約として無効となるものではない、と判示しています。この理は、建物賃貸借にも当てはまります。

「賃借人が真実解約の意思を有していると認めるに足る合理的客観的理由」については、たとえば、東京地裁昭和55年8月28日判決では、店舗の賃貸借について賃貸人が数年後に息子に独立自営させるために店舗建物を自己使用する必要があり、テナントも他に利用可能な建物を確保していたことなどを理由に肯定しています。

また、東京地裁平成5年7月28日判決も、賃貸人が期間満了の際に自己使用の必要から更新を拒絶するもテナントが子供の成長までの利用を求めたので、結局10年後の解約を合意しその間は賃料の増額をすることなく低廉な賃料で賃貸する合意をしたケースで、やはり合意を不当として無効とするべき理由はないとしています。

いずれも、テナントにとっては更新の際には気に入らない合意はせず法定更新の選択もできたのに、あえて期限付解約に応じているからには、それだけのメリットを感じる事情があり他に不当な事情は見当たらず自己の意思で期限付解約の合意をしたと認定されています。貴社の例でもテナントに有利な事情が種々あることから同様に認定される可能性はあるでしょう。

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