【Q&A】賃貸借契約における敷金と保証金

Q. X 社は、オフィス用途の商業ビルを賃貸した際に、

テナントY 社から、賃料は相場よりも低額に設定する反面、保証金としては高額の賃料の100か月分の預託を受けていました。保証金は、テナントの賃貸借による債務の弁済に充当し、契約終了の時は15パーセント償却し、残額は建物の明渡し後速やかに返還する約定でした。

しかし、X 社は、経営合理化のためビルを売却処分する事態となりました。テナントY社は、たまたま弊社ビルの良好な借主でもあって相談を受けたのですが、保証金は、ビルの買受人に引継がれますか、それとも引継がれずにX 社への債権として留まりますか。

A. ビルの賃貸借では、保証金が賃貸人とテナントとの間で授受されるのが通常です。

この場合、テナントから敷金の他に保証金が賃貸人に交付される場合もありますが、保証金のみが交付される場合も少なくありません。

保証金のみが交付される場合、その性質は何かが問題となります。保証金の典型としては、建物の建設などの資金に利用すべくテナントから融資がなされる金員(建設協力金)があり 、賃料の何十カ月もの金額になります。 他方、保証金の中には、他の性質として賃貸借契約にともなうテナントの債務を担保する敷金があります。敷金の規模としては、商業ビルの場合、賃料の数か月分から20か月分くらいまでと言われています。

敷金と保証金の取り扱いの大きな違いは、賃貸物件を処分する場合の承継の点にあります。敷金の場合、賃貸建物が売却処分されると、テナントは建物の占有をもって買受人に賃借権を対抗できますので、買受人は賃貸人の地位を承継し、敷金(返還債務)も引き継ぎます。他方、建設協力金などの保証金は、賃貸人への貸金なので、賃貸物件が処分されても買受人には引き継がれません。元の賃貸人に対する債権として留まります。

テナントY 社の交付した保証金は、契約終了時に15パーセントの償却により返還される約定であり、ビルのオーナー(=賃貸人)がビルの建設等の資金に利用するために受けた建設協力金と言えますが、それにとどまらず、テナントの賃貸借による債務の弁済に充当されるものですので、敷金の性質をもつ部分を含みます。

ご質問と同様の事例で、東京高裁平成6年12月20日判決は、保証金には、建設協力金と敷金が含まれ、敷金の範囲で買受人に引き継がれると判断しています。なお、同判決は、諸事情を勘案の上ですが、保証金2,000万円のうちその1割に当たる200万円が敷金であると判断しております。

また、東京地裁平成13年10月29日判決では、保証金(賃料の38カ月分以上)のみ交付された事例で、テナントの債務を担保し、契約終了時に10パーセントの償却の後に返還するものとされる約定から、建設協力金と敷金を併せもつものと判断し、うち敷金は賃料の10カ月分の範囲であると判断しています。

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